Association for Applied Psychophysiology and Biofeedbackの略。
「応用心理生理学とバイオフィードバック協会」本部はコロラド州にある。
研究、教育と実践を通じ、健康と生活の質の向上のために、応用心理生理学とバイオフィードバックの普及が目的の非営利団体。会員数2000人。
AAPB学会参加の背景は?
~ 今回ニューオリンズで開催されたAAPBの年次大会に参加された経緯をお聞かせ下さい。
志賀 AAPBの年次大会は今回が42回目ですから42年の歴史があり、30年ほど前の10回目に初めて参加しました。
~その時のきっかけは?
志賀 松下電器の研究所で脳波の研究を始めようとしたときに参加したんです。アメリカではどういう研究が行われているかを知ることが目的でした。その当時は「米国バイオフィードバック協会」という名称でした。コロラド州デンバーで開催されたんですけど、参加者が1000人くらいでしたでしょうか?非常にエキサイティングな印象でした。
~ つまり日本とはだいぶ違ったわけですね?
志賀 もちろん研究もありますが臨床の方が多かったですね。アメリカでは街にサイコクリニックが多くあって、神経症や鬱病を扱うセラピーが盛んでした。カウンセリングや催眠療法など様々ですが、でも客観性に欠けるでしょ?目に見えないから。そこでバイオフィードバックという概念で、客観的な数値を手がかりにしてトレーニングができたので期待されたんです。私は脳波について知りたくて行きましたが、非常に活発で、当時はジョー・カミヤさんが中心的存在でしたが、日系三世かな?日本語は全然通じないけど、すごいなと思って5年ほど連続で参加しましたね。
アメリカのバイオフィードバック史
~ すべてアメリカでの参加ですか?
志賀 そうです。最初行ったのはデンバー、次にサンフランシスコ、アルバカーキーなど、毎年開催地は移動していました。でも松下電器を退職してからは、研究というよりは実践で忙しくなってしまい、しばらくご無沙汰で、今回は20年ぶりの参加だったというわけです。
~ なるほど
志賀 まさに歴史を感じました。学会の名称も変わり、「バイオフィードバック協会」が「応用心理生理学とバイオフィードバック協会」つまり「応用心理生理学」がメインになったんですよね、バイオフィードバックは付け足しみたいなものになっちゃった(笑)。まぁ成熟期に入ったということじゃないんですか?今回の参加者も恐らく300人位だったように思います。規模も小さくなりました。そして参加者の2/3は心理生理学が専門で、バイオフィードバックの発表も少なくなりました。
~ 一昨年に大阪で開催された「日本バイオフィードバック学会」とはかなり趣旨が異なるんですか?
志賀 そうですね、日本の場合には文字通りバイオフィードバックが中心の学会ですからね。日本では150名程の参加者でしたから規模的には似てきましたね。
今回アメリカの学会に参加した理由
~ 今回、久しぶりにアメリカの学会に参加された理由を教えてください。
志賀 アメリカのバイオフィードバック学会に始めて参加して刺激を受け、松下電器で基礎研究的に没頭したのですが、8年くらい続けたら「脳波の研究は中止」ということになったんです。そのころ、私はアルファ波の面白さを掴んでいましたので、「研究を止めてはもったいない」と思いで退職して、脳力開発研究所を設立しました。ご存知の通りです(笑)。
~ はい、存じ上げています(笑)。
志賀 幸い2年間は松下電器からの委託研究の契約をもらい、脳波の研究は続けられたのですが、次第に実践応用というかセミナーをやったりBF装置を開発して販売する仕事が増え、現在に至ったわけです。
~ はい。
志賀 実用面で役に立っていることは分かっているけど、メカニズムというか、「なぜアルファ波が出るのか」「アルファ波が出ているとき脳はどうなっているのか」という根本的なことについては中途半端なまま来てしまった。そこでもう一度基本の部分に立ち帰って研究し直したいということで、今年でもう4年目になりますが、電気通信大学の大学院に入り、そこで基礎研究を始めたんです。
~ ものすごいチャレンジ精神でしたね!
志賀 まぁ。ね(笑)。そうしたら面白いことがみつかったもんですから、AAPBで発表しようと思い、大学に申請して参加費用を出してもらいました(笑)。面白いのは何かというと、前頭葉と後頭部で計測するアルファ波を分析すると、ときどき位相が揃ってコヒーレントになるんですよ。
~ それってどういうことですか? 詳しくお聞かせ下さい。