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2011年度 AAPB学会(米国) 参加後の志賀一雅博士インタビュー
志賀博士が学会で発表した内容

志賀 コヒーレントとは、2つの波の位相が揃う現象で、例えば普通の光はいろいろな波長と位相の波が混在していますが、特定の波長で位相が揃いコヒーレントになるとレーザー光線になります。位相が揃うというのは,波ですから山や谷があるでしょう?波の山と谷の時間的な位置を位相と言いますが,2つの波の山と谷の時間的な位置が一致していると言うことです。もちろん脳波がレーザー光線のようにはなりませんが、雑念が無く、集中力が高まり、気づきが鋭くなると思います。例えば,目を閉じて深呼吸をしてメンタルウェルネストレーニングの「手が暖かい」「お腹が暖かい」など、体の一部に意識を集中させると、わずか2秒~7秒間ほどですがコヒーレントになるんです。

~ なるほど

志賀 その分析法を、かねがね気になっていた「人と人とで脳波のシンクロ現象があるのではないだろうか」、つまり「気」が合うというのは、2人の脳波がコヒーレントになるのではないか、ということに当てはめてみたのです。もちろん、それぞれ独立した脳ですから、脳波がシンクロすることは考えられませんが,実際は2~3秒と短い時間ですがシンクロすることがあるんです。共同集中と言いますが、一緒に同じことに集中すると揃うんです。これは偶然とは言えないくらいの揃いかたです。

~ つまり脳波が同調するという現象が見られるということですね。

志賀 そうです。もちろんそのメカニズム、つまり何が引き金になって脳波が同調するのかは分かりませんが、偶然に同調するとは考えられません。脳波が同調するということは、何かが起きているのではないか?別の言い方をしますと共鳴とか引きこみ現象が起きているのではないかと思います。分かりやすく言えば「気が合う」とか「気が通じる」というような感覚が脳波的に関連づけられるのではないかと考えています。

~ なるほど

志賀 きっかけは、鍼灸師さんが患者さんに鍼治療をするときの脳波を2人同時に測らせてもらったんです。鍼を打つポイントを手で探る触診で、何かを感じる、気がでているのを感じるらしいですね。そのときの脳波を測ると、鍼灸師さんと患者さんの脳波がシンクロするんです。そういう現象を見つけたので、「これは早く学会に報告して、関心を持つ研究者と情報交換しながら研究を深めていこう」と、その為に発表したわけです。

アメリカと日本の‘気’に対する関心の違い

アメリカと日本の‘気’に対する関心の違い~ 以前、志賀先生が「現代科学では‘気’の現象はエビデンスが得られ難いからあまり研究されないけど、逆に言えば21世紀の科学で‘気’をどう解明するかは,面白くてホットな話題になるのでは」というお話を聞かせていただきましたが、そこにリンクするということしょうか?

志賀 まさにそこなんです。われわれの日常生活では、「ヤル気がある」とか「気分がいい」とか「いい気持ち」とか「元気や病気」など‘気’のつく表現が多いですよね。あまりに‘気’という言葉を使っているから、‘気’の本質を考えない。当たり前の感覚でしょう?

~ そうですね

志賀 ところがアメリカ人はそういう感覚が無いから不思議に思うんでしょうね。日本人同士はたいして会話を交わさなくても意思が通じ合う。気功法などは‘気’で人を飛ばす。この学会でも朝6時から7時まで気功の講習をやっていました。結構大勢参加して、何が分かるのか熱心ですね。だから「気が通じるとか、気が作用するという現象は脳波的に共鳴している」という考え方を提案したけど、結構理解してもらえましたよ。

学会に参加して得たもの。

~ 今回そういう目的を持って参加された訳ですが、参加した成果、感想などを教えて下さい。

志賀 自分で評価するのは難しいけど、よかったと思います。ポスターセッションで発表したけど、参加者300人くらいの中で、立ち止まって話を聞いてくれた人が2割の60人くらいかな。そして質問したり意見を述べてくれた人がその中の2割、12名くらい。まさに2割8割の法則ですね。そしてさらに「これはいい研究だ、おもしろい」と言ってくれた人が5人いたんです。それをどう評価するかですけど、5人いたということは私にとっては大きな収穫ですね。5人の研究者と今後ディスカッションできるなということです。もう少し英語が話せればね・・・おもしろいのに!(笑)。

~ 逆に言うと、そういう学会がないと発表に関してのレスポンスもいただけないわけですからね。

新たに取得する博士号

~ そういう形で参加されて成果や出会いも含めてあったと思いますが、今回参加されたことによって現時点での博士号のお話は?

志賀 2人の脳波の同調をテーマにした学位論文は難しいと感じています。メカニズムを明確にしないと「有り得ない、たまたまじゃないの」と相手にしてもらえない。議論が噛み合わない。アメリカだと興味をもつ人がいて、「それはあるかも知れないね」という感じで話ができる。だから大学に提出する博士論文のテーマは、「脳内複数部位間でのアルファ波のシンクロ現象」にとどめて、補遺で2人の脳波のシンクロ現象が観察されたこを添えようと思っています。

~ 既に博士号はお持ちですが、今回の学会の参加も含めて、新しい研究内容で博士号を申請されるのでしょうか?

志賀 そうですね。9月にエントリーしてその後の審査で決まります。そこで決まれば来年3月に取得して卒業できるという流れです。

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